当店で長く「ライタ」と呼んできた一皿があります。
ヨーグルトにきゅうりと生姜のみじん切りを混ぜ、ココナッツファインをのせ、
マスタードシード、カレーリーフ、鷹の爪を油で弾かせて、ジュッと回しかける。
さっぱりとしたヨーグルトに、香ばしいスパイスの香りが重なる、私の好きな一皿です。
マスタードシードや生姜など、消化を助けるとされるスパイスの香りも、大切なアクセント。
この料理をずっと「ライタ」と呼んできましたが、店を始めてからしばらくして、
こうしたテンパリングを加えたものは、南インドでは「パチャディ」と呼ぶのだと知りました。
同じようなお料理でも、土地によって呼び名や作り方が少しずつ違う。
そんなことを知るのも、インド料理の面白さのひとつです。
このライタは、緑園都市に店があった頃、夫から教わった数少ない3つの料理のうちのひとつ。
菜の花のアチャール、ダールと並び、私にとっては原点のような料理です。
今の能見台に移転して、店を再開したばかりの頃のこと。
お客様から「これは南インドの何州の、どの町のレストランの料理ですか?」と尋ねられて、
私は答えることができず、困ってしまいました。
今思えば、まだインドのことも、料理のことも、知らないことばかりだった頃。
そんな経験をひとつひとつ重ねながら、少しずつ料理の背景を知り、今に至っています。
久しぶりにこの料理を思い出し、そんな昔のことを思い出しました。