レシピ&コラム  76~80

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76.きゅうりのライタとパチャディ


当店で長く「ライタ」と呼んできた一皿があります。

ヨーグルトにきゅうりと生姜のみじん切りを混ぜ、ココナッツファインをのせ、
マスタードシード、カレーリーフ、鷹の爪を油で弾かせて、ジュッと回しかける。
さっぱりとしたヨーグルトに、香ばしいスパイスの香りが重なる、私の好きな一皿です。
マスタードシードや生姜など、消化を助けるとされるスパイスの香りも、大切なアクセント。

この料理をずっと「ライタ」と呼んできましたが、店を始めてからしばらくして、
こうしたテンパリングを加えたものは、南インドでは「パチャディ」と呼ぶのだと知りました。
同じようなお料理でも、土地によって呼び名や作り方が少しずつ違う。
そんなことを知るのも、インド料理の面白さのひとつです。

このライタは、緑園都市に店があった頃、夫から教わった数少ない3つの料理のうちのひとつ。
菜の花のアチャール、ダールと並び、私にとっては原点のような料理です。

今の能見台に移転して、店を再開したばかりの頃のこと。
お客様から「これは南インドの何州の、どの町のレストランの料理ですか?」と尋ねられて、
私は答えることができず、困ってしまいました。
今思えば、まだインドのことも、料理のことも、知らないことばかりだった頃。
そんな経験をひとつひとつ重ねながら、少しずつ料理の背景を知り、今に至っています。
久しぶりにこの料理を思い出し、そんな昔のことを思い出しました。


77.サンバのこと


サンバは、野菜とスパイス、豆を一緒に煮込んだ菜食カレー。

南インドでは、まさにお味噌汁のような、毎日の食卓に欠かせない存在です。

今だから言えますが、初めてサンバを口にしたときは、そのおいしさがよく分かりませんでした。けれど、何度か食べているうちに、豆と野菜の甘み、ほのかな酸味、スパイスの香りが少しずつ輪郭を持ちはじめ、いつの間にか好きになっていました。南インド料理の中には、何度か味わううちに、少しずつ好きになっていく料理もあるのですね。

作り方は、まず仕上げに使うマサラパウダー作りから。
クミンやコリアンダー、タカノツメなどを香りが立つまで丁寧に炒り、挽いておきます。

鍋に油をひき、マスタードシードをはじけさせ、野菜とタマリンドという酸味のある豆科の植物を加えて煮込みます。そこへ、あらかじめ煮ておいた豆を加えます。それは日本でいう味噌を溶き入れるような感覚でしょうか。そして用意しておいたマサラパウダーとコリアンダーを加えて仕上げます。

今回はご縁があって、陶芸家・石川隆児さんの八角のお皿に、冷凍カレーのサンバを盛り付けてみました。
すっと伸びるふちのラインが美しく、クラシカルでありながら、どこか新しさもあって余白がとても印象的なお皿です。
その余白があることで、素朴なナスや豆のカレーの柔らかな表情が引き立ちます。見慣れたいつものカレーが少し上品で特別な一皿に仕上がりました。


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